-報告(4)ディスカッション【1】

ディスカッション【1】自然環境保全と再エネの共生をさぐる 抜粋

コーディネーター 長谷川理氏(エコ・ネットワーク主任研究員)
パネリスト
中原裕幸氏(一般社団法人海洋産業研究会常務理事)
浦達也氏(公益財団法人日本野鳥の会自然保護室 主任研究員)
市川⼤悟⽒(WWFジャパン⾃然保護室気候変動・エネルギーグループ オフィサー)
吉田文和(愛知学院大学経済学部教授)
藤井賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院准教授)

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吉田 「関係者の参加と透明性が大事だ」と私も話しましたが、中原さんのご報告では、(漁業者への)補償ではなく、最初から漁業者がプランニングに参加する形で事実上の規制やゾーニングをしていくやり方が紹介されて、非常におもしろかったです。鳴門の場合も、関係者をみんな参加させて、透明性を確保しながらゾーニングを進めている事例だと思います。

 衝突率を論じる時には、事後調査が欠かせないんです。事後調査なしには、どういう地形や状況の場所に建てられた風車でバードストライクが起きているのか分かりません。海外では、そうした事後調査の結果から衝突確率の計算モデルを作っています。まずウィンドファームごとにモデルが作られ、他の場所にも適用できるか、モデルを試して、事前の予測を立てたりします。日本(の環境アセスメント法)では事後調査は義務づけられていません。だから、衝突確率を事前に計算するにしても、すごく一般化されたモデルしか使われていないんです。

市川 ドイツでは行政の再エネ導入量(目標)がまず決まっており、その導入量を確保できるように 適地を色分けするような相対的評価で、ゾーニングが行なわれたと覚えています。でも鳴門市では、いままでのところ再エネの導入量を定量的に設定してはいないため、前者 のやり方(相対評価)は今は考えられないかなと思います。 ただ(絶対評価で)仮に陸上に風力発電の適地がないとな れば、先ほど潮流発電のお話も出ていましたが、たとえば 風力以外の再エネの導入適地とも比較し、導入するべき再 エネの種類と場所の優先順位をつけることで、必要な再エネ導入量を確保するなどのアイディアは出てきています。

IMG_0096 中原 漁業協調を目指して、洋上風車の基礎部分に魚礁効果があると言う場合には、その海域にはどういう生物種が生息しているかということと、同じその海域でどういう魚種を対象に漁業をしているか──ヒレものを追いかける漁業なのか、ヒラメ・カレイなど海底にいる底魚なのか、アワビの類なのか──その地域の漁業者が何を一番大事しているかによって、じゃあそこだったらこういう魚礁効果のある構造にしよう、それでどうですか、という話をすることになります。一口に魚礁効果と言っても、対象魚種は海域ごとに異なりますし、風力発電事業者が勝手に決められるものではないと思います。漁業者と相談しければいけないし、地元の生物や生態系に詳しいアカデミアの先生の意見も聞いて決めなきゃいけないということになると思います。

藤井 たとえば山口県安岡沖の洋上風力計画について、長谷川さんは「うまくいっていない」と捉えておられますが、私は、浦さんのお話で「野鳥の会」がかなり踏み込んだ議論をされたと聞いて、むしろ成功事例と思ったんですけど。洋上風力をこれから建てよう、アセスを始めようという時に、現在のスナップショットと、構造物が出来上がって十数年経った後とで、生態系のほうが変わっているかもしれないのは、 先ほど温暖化の例でお示しした通りです。こういう議論が 非常に難しいのは承知の上で……。今日は主に野鳥に対する直接的な影響を議論していますが、これは生態系の一部のお話です。鳥の餌となる生物は(温暖化の影響などで)どんどん変化しているわけですね。そういうことも踏まえると、時間的・空間的により細かい議論をしなければならない。そのためにはデータを集めないといけません。

 渡り鳥は、渡りの方向に対して平行に1列に並んでいるような風車(列)はそんなに避けないのですが、デンマークのウィンドファームの例のように面的に多数の風車が建っていると、そこを避けて飛ぼうとするので、ものすごい距離の迂回を強いられます。また、渡りの途中で中継地として利用してきた沼のそばに風車が新設された結果、その沼が使えなくなって、もうひとつ先の中継地まで行かざるを得なくなった、という事例が海外で報告されています。ひとつ先の沼は餌の量が比較的少ないのですが、風車の建設によって、一番使いたかった場所を飛ばさざるを得なくなったということです。

中原 当然、事業者は自分で費用をかけてきたと思います。同時に、事業者自身が行なう影響評価がちゃんとしたものかどうか、監視する仕組みを公的に設ける必要もあると思います。基本的には、国や公的機関が全部(調査や評価や監視を)やれればいいんですけれど、そこまで予算を付けられない、ということもあるかもしれません。とにかく事業者は、たとえば漁業者に対して補償ではなく漁業協調をするのであれば、それはやっぱり自分で(コストを)負担すべきだと思います。

吉田 北海道の大規模な太陽光発電所や風力発電所は、半分以上が道外資本によるものです。地元への還元が非常に少ないわけです。経済的還元も少ないし、情報公開、地元の参画促進も非常に少ない。これが現在の最大の問題だと私は思うわけです。そこに焦点を絞って、もちろん自然保護団体が 声を上げるのも大事ですけれど、地元への参画と還元が少なくて、いままでの石炭などもそうでしたけれど、北海道にある貴重な再生エネルギー資源の利益が道外に持っていかれるというパターンがまた繰り返されている。これが最大の問題だと自覚する必要があると、強調しておきたいと思います。

長谷川 累積的な影響をどう評価するか、また、ゾーニングをどう行うか、どちらも事業の規模や対象地域の広さによって変わってくると思います。「鳴門市」のような市町村レベルで可能な取組みでも、「北海道」という広い地域 で大規模な計画が進んでいる現状に当てはめるのは難しいかもしれません。

…全記録は、電子ブック、または書籍版でどうぞ

>ちょい読み!報告ダイジェスト INDEX
>報告(1)開催にあたって
>報告(2)第1部 再生可能エネルギーと野生生物の共存〜風力発電の可能性と課題
>報告(3)第2部 自然環境保全のもとでの再エネ推進は可能なのか
>報告(4)ディスカッション【1】自然環境保全と再エネの共生をさぐる
>報告(5)第3部 北海道の風力発電と自然環境保全、開かれた議論のために
>報告(6)ディスカッション【2】北海道スタイルの開かれた議論の場を目指して

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投稿者: 北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク

2011年6月、地産地消エネルギーの最大限の活用、自然エネルギーアイランドへのシフトをめざし、きたネット有志が呼びかけ人となり、「北海道エネルギーチェンジ100プロジェクト」がスタート。「北海道条例第百八号 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」の周知・推進、「北海道の電気 再生可能エネルギー100%へのロードマップ」による提言、市民主体のセミナーなどを行ってきました。 2014年3月に、3年間の活動が評価され、北海道新聞エコ大賞奨励賞を獲得しました。 2014年5月17日に正式に団体「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」を設立、「自然エネルギー100%の北海道」に向かって、見えるネットワーク、行動するネットワークづくりをめざします。さらに私たちの活動がひとつのモデルとなって、全国で同じ目的で活動する方とつながってより大きな力となっていくことを願っています。