-報告(6) ディスカッション【2】

6)ディスカッション【2】北海道スタイルの開かれた議論の場を目指して  抜粋

コーディネーター 長谷川理氏(エコ・ネットワーク主任研究員)
パネリスト
金子正美(酪農学園大学環境共生学類教授)*
後藤達彦氏(NPO法人EnVision環境保全事務所)
遠井朗子(酪農学園大学環境共生学類教授)*
鈴木亨(NPO法人北海道グリーンファンド理事長)*
宮本尚(北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク代表)*

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-長谷川 方法書や評価書のような、一般にアセス書といわれるものは、公開されてはいるんだけれども、公開の期間が限定されているので、縦覧期間が終わってしまえば見られなくなってしまう。それから、縦覧期間中でもダウンロードできなかったり印刷できなかったりする。ブラウザによっては見られないとか、不具合が生じてPCが不安定になるとか…….。後藤さんは「必ずしも事業者みんながそういう対応をしているわけではない」とお話しでしたけれど、こうした状況は昔からですか? それとも、最近こういうのが増えている、という印象ですか?

-後藤 電力以外の事業は(アセス書を比較的簡便に)見られるんですよね。電力だけがこうのような状況になっている、ということです。内輪で誉めるのもアレですけど(笑)(鈴木さんが代表取締役を務める)市民風力発電さんだけじゃないでしょうか、いま見られるのは。

-鈴木 ホントはその情報がね、 環境省なのかどこなのか分かりませんけど、データベースとして積み上がっていくっていうのは、業界的にも悪いことじゃない。きちんとした議論があればそういう流れになるんじゃないかと思っています。

-金子 北海道は非常に先進的な条例を作ったんです。全国で2番目くらいの早さで(1978年)、国の法律(1997年)ができる前から環境影響評価条例を作った。その中に「縦覧」「公聴会」を入れているのは、アセスは市民参加・市民協働がベースだという認識からで、当時としては非常に画期的な条例だったと思います。ただ、縦覧期間を制限しているのはですね……。役所にしたら、期間中ずっと(建物内に)スペースを取って書類を置き、閲覧者が来たらそれに対応しなくちゃならないわけです。だからアナログでやっていた時代は縦覧期間を限って公開するというのは仕方ないことだったと思います。けれどいまデジタルの世界になっちゃって、サーバーに入れておけば勝手にダウンロードしてくれるにもかかわらず、アナログ時代に作った条例を逆手にとって、「1カ月縦覧と書いてあるからそれ以降は縦覧させない」「しなくていいんだ」というふうに事業者が解釈しちゃってるんですね。

-長谷川 累積的評価の問題について。事業者がアセス手続きの中で累積的な影響の評価を求められたとして、他社の事業計画が(非公開で)分からない場合もあると思うんですよね。縦覧期間が重なっていれば可能かもしれませんが。事業者だったら、行政機関に要求すれば情報が得られるものなんでしょうか? あるいは事業者同士で直接、互いに情報交換して、累積評価できるのでしょうか?

-鈴木 (累積的評価を事業者がやるのは)なかなか難しいのが現実だと思います。行政機関があるていど主導的にやらないと……。たまたまこれ、道北地方で同時期に集中しているから(他社のアセス書類を)見られるチャンスはあるかもしれませんけど、それ以外のケースだと多分、手に入らないと思いますね。

-遠井 ステークホルダーと聞くと、日本だと「利害関係のある人」とか、「漁業権者のように法的権利のある人」というふうに、非常に狭く捉えられがちです。でもたとえば先ほどのオーフス条約の場合、「利害関係のある公衆とは、影響を受ける恐れのある人」とされていて、環境保護を推進する非政府組織は「利益を有する者」とみなされています。つまり必ずしも地域性に縛られなくって、たとえば渡り鳥の経路で開発事業が行なわれるような場合、日本野鳥の会さんが非常に高い関心を持っているということであれば、地元支部の方だけでなく、野鳥の会全体として利害関係者になれます。(中略)日本はロシアと渡り鳥条約を結んでいるところですし、そうするとこれ(風力発電開発)は(道北)地域だけの話ではなくて、越境的な効果がある事業だという言い方もできると思います。ヨーロッパの場合、隣国との越境影響がある場合のアセスについては、他国の人も意見を言うことができるし、国籍に基づく差別をしないとか、少なくともサマリー(概要)についてはだれでも分かるような言語で書くように、とされています。本来であれば、ここ(北海道北部)で風力発電開発をやる以上、ロシア語でとまではいかなくても、せめて英語でサマリーくらいは公表することも必要ではないかなと思いました。

-金子 環境省がいま作って いる「風力発電のためのデータベース」をスクリーンでお見せしたいのですが……。このデータベースのコンセ プトは、配慮書段階の、事業者さんが一番最初にデータを 調べて、自分が計画している地点がいったいどういう地域なのかを分かってもらえるような、そういう基礎情報── かなり粗いラフなデータ──を提供する、というものです。その後に、細かい環境アセスメントはキッチリやらなくちゃいけないということで、細かいデータは逆にあまり入っていない状況です。でも、環境省はこういう基礎情報 だけでも(事業者が重宝して)使えるんじゃないかと、多 分1億円くらいかけてデータベースをやり始めているんで すが、いまだにあんまり中身が入ってなくてですね。

-後藤  アセス書に対して、アセスが終わるまではすごいワイワイ言われているんですけど、アセス手続きが終わって(発電所が)出来ることが決まっちゃうとパタッと関心がなくなっちゃうんですよね。事後調査は非常に重要でして、たとえば京極町の揚水発電所ダム(北海道電力、アセス評価書は2000 年発行)事業では、現在も調査が行なわれ、結果が報告されています。揚水発電ダムが良いか悪いかは別にして、出来ちゃったものはしょうがないんだけれども、その後ちゃ んと影響調査をやっているか、自分たちで情報に接してい かなければ……。

-宮本 いろいろ調べていくと不思議なことばっかりで。「何でこんなことが?」ということばかりなんですよ。意図的なのか意図的じゃないのかって、私は分かんないんですけど、私たち市民の活動を分断するような、火ダネになるようなポイントがあっちにもこっちにも、「これ、タネを撒いたのか?」って思うくらい、散らばってるんですよ。「ここでAとBに意見が分かれちゃうよね」とか「これはどっちにもとれるよね」とか。(中略)市民ひとりひとりが自覚的にいろいろ勉強して、自分たちの意見を持って選択していくには、きちんとした情報がきちんと公開されて、私たちが得られないと、できない。一番根本的なのはそこだと思っています。

-長谷川 きょうは風力発電の話でしたが、たとえばメガ ソーラー施設についてのご意見・ご質問もきています。きょうは、特に後半は情報公開や情報共有の問題を話題にしましたけど、本当は「情報はしっかり公開されている」というのを前提にして、その情報をもとに環境への影響はどう なのか、という点をもっと議論しないといけないと思うんです。そういう意味では、僕もまだまだ聞き足りないところもあります。せめて、情報を得るというこんな大前提の部分がいまだ問題になっているということを認識して、今後の議論に発展させられたらと思います。

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>ちょい読み!報告ダイジェスト INDEX
>報告(1)開催にあたって
>報告(2)第1部 再生可能エネルギーと野生生物の共存〜風力発電の可能性と課題
>報告(3)第2部 自然環境保全のもとでの再エネ推進は可能なのか
>報告(4)ディスカッション【1】自然環境保全と再エネの共生をさぐる
>報告(5)第3部 北海道の風力発電と自然環境保全、開かれた議論のために
>報告(6)ディスカッション【2】北海道スタイルの開かれた議論の場を目指して

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投稿者: 北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク

2011年6月、地産地消エネルギーの最大限の活用、自然エネルギーアイランドへのシフトをめざし、きたネット有志が呼びかけ人となり、「北海道エネルギーチェンジ100プロジェクト」がスタート。「北海道条例第百八号 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」の周知・推進、「北海道の電気 再生可能エネルギー100%へのロードマップ」による提言、市民主体のセミナーなどを行ってきました。 2014年3月に、3年間の活動が評価され、北海道新聞エコ大賞奨励賞を獲得しました。 2014年5月17日に正式に団体「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」を設立、「自然エネルギー100%の北海道」に向かって、見えるネットワーク、行動するネットワークづくりをめざします。さらに私たちの活動がひとつのモデルとなって、全国で同じ目的で活動する方とつながってより大きな力となっていくことを願っています。