-報告(5)第3部

第3部 北海道の風力発電と自然環境保全、開かれた議論のために

「環境アセスメントとアセスメント情報の公開について」
後藤達彦氏(NPO法人EnVision環境保全事務所) 抜粋

007goto-アセス制度は「合意形成のためのサブシステム」と呼ばれています。事業者がよりよい環境配慮をするための情報交流の手続き、住民や地方公共団体の意見を聴きながら合意形成を図るためのもの、と思ってください。

-「電力アセス」というのがあります。発電所についてだけ、一 般のアセスとはちょっと違うんですね。 さきほど浦さんが「風力発電所アセスの方法書で環境大 臣の意見が出ていない」とおっしゃっていました。電力アセスの場合は、環境省が意見を言うのは「配慮書」と「準備書審査」の段階だけなんです。(代わりに)経済産業省がコントロールする、と。悪く言うと、環境省とかそうい うところをあんまり入り込ませないような仕組みです。 電力アセスは審査期間が3~6カ月とすごく長い。さらに発電所アセスについては、経産省が『発電所に係る環境影響評価の手引』を出しています。この手引で「やる必要がない」と書かれているものは、事業者は頑としてやりません。たとえば海洋生態系の関係ですと、海洋生物の調査はするものの、手引では「海洋生態系の評価はしなくていい」となっています。だから温排水とか、火力発電や原発はもちろん、浮体式(洋上風力発電所)なんかもそうですけれど、種々の生物についてはやるんですけれど、全体の海洋生態系の評価はやっていません。

-いま実際どうなっているかというと、ここが問題なんですが、風力発電事業のアセス書類をいまインターネットの事業者のホームページで見ようとしても、見られない場合があります。インターネット・エクスプローラーとアドビのソフトでないとPDF が見られない。(指定ソフトを使っても)ダウンロード出来ない、印刷も出来ないというふうになっています。これ、別に経産省がそう決めている わけではないし、さっきの環境省の「考え方」でもどんどん出しなさいと言っているのに、なぜか出さない。配慮書、 方法書、準備書……と順番に来るんだけれども、方法書には配慮書(段階での検討過程)のことについて書いてあるんですが、(方法書縦覧段階では)配慮書が見られないから、 どう対応したのかがよく分からない。

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「科学的な環境アセスメントのための情報の収集・解析・公開」
金子正美(酪農学園大学環境共生学類教授)* 抜粋

010kaneko-データのオープン化には2つのルールがあると言われています。1つは「機械判読に適したデータ形式」にすること。もう1つは、これが重要なんですが、「二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータ」であること。一般のホームページにあるデータと比べて、何が違うのか? アセス図書の開示を求めると、「著作権があるから公開できない」と事業者さんは言うわけですが、実は「著作権」と「情報公開」は全く違うということをこれからお話ししようと思います。

-「CC BY」は、オープンデータを推進するための新しい著作権の考え方を表すマークです。英語の「Creative Commons License」からきていて、「インターネット時代のための新しい著作権ルール」と説明されています。作品を公開する者が「この条件を守れば私の作品を自由に使ってかまいません」という意思表示をするためのツールです。「CC BY」はかなり緩やかな権利宣言で、「作者が自分であることを表示してくれたら、あとは自由に勝手に使ってください」という意味です。他に「商用利用はダメ」(CC BY NC)、「改変は一切認めません」(CC BY ND)とか、自分の公開データに適合するマークを貼り付けるわけです。これによって、データの著作権を保護しつつ、どんどん使ってくださいというのが、このオープンデータです。

-もしオープンデータ化をしたらど うなるでしょう。最初の時点でデータに「これは公開します」とCC ライセンスが付いたら、(各段階の機関を経ても) 最後まで同じようなデータ量を保つことができます。 国の段階までいってもオープンになります。個人情報などの秘密のデータは、出さないよう別扱いにしておけばい いわけです。これによって、生データが非常に使いやすく なるのです。 もちろん、異論もあります。データ自体のエラー(不正確さ)もあるので、(この方法で作ったゾーニングを)ホントに公開していいのかどうか、いろいろあるんですがね ……。

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「環境アセスメントを活用する~より民主的かつ透明な決定を目指して」
遠井朗子(酪農学園大学環境共生学類教授)*抜粋


0081toi-環境規制のあり方も、特にヨーロッパやアメリカなどではずいぶん変わってきています。いわゆる「規制アプローチ」──政府から事業者に対してコマンド&コントロールする──のやり方ではなく、「協働アプローチ」という形が採用されることが増えてきています。規制アプローチは「科学が確実な正解を導き出してくれる」という考え方に基づいていますが、それでは対処しきれない問題が出てきたということです。 協働アプローチにおいては、政府と事業者の2者間ではなく、一般公衆、私たちのような市民とか利害関係者、先ほど中原さんが漁業協調のガイドラインを出しておられましたが、そういう方々がラウンドテーブルで一緒に議論して、より良い解決を導きましょう、というものです。

-1992年のリオ会議で、国連に加盟している全ての国が参加して採択された「環境と開発に関するリオ宣言」に第10原則として明言されています。この原則を最も明 25 確に反映させたものが、ヨーロッパ経済委員会が作った オーフス条約(The Aarhus Convention / Convention on Access to Information, Public Participation in Decisionmaking and Access to Justice in Environmental Matters.  環境に関する情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する条約)です。

-課題は、科学的知見が不足している中でどうするのか。また、地域の受容可能性について妥当な考慮が払われているのかどうか、という点です。もし日本がオーフス条約の当事者だとしたらどうでしょう?

-戦略アセスや上位計画がない中では、配慮書手続(を通した立地調整の可能性)は非常に限定的であると考えられますので、いま大臣意見で個別に立地調整を行なって事実上のゾーニングとするという可能性が示唆されていますけれども、これだと結局、その大臣意見を作る過程に利害関係者や市民が参加することができないので、早期段階(配慮書手続など)の参加は骨抜きになりかねません。「事実上のゾーニング」が行なわれるとしても、そこへの(市民の)参加を確保すべきではないかと考えます。

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>ちょい読み!報告ダイジェスト INDEX
>報告(1)開催にあたって
>報告(2)第1部 再生可能エネルギーと野生生物の共存〜風力発電の可能性と課題
>報告(3)第2部 自然環境保全のもとでの再エネ推進は可能なのか
>報告(4)ディスカッション【1】自然環境保全と再エネの共生をさぐる
>報告(5)第3部 北海道の風力発電と自然環境保全、開かれた議論のために
>報告(6)ディスカッション【2】北海道スタイルの開かれた議論の場を目指して

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投稿者: 北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク

2011年6月、地産地消エネルギーの最大限の活用、自然エネルギーアイランドへのシフトをめざし、きたネット有志が呼びかけ人となり、「北海道エネルギーチェンジ100プロジェクト」がスタート。「北海道条例第百八号 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」の周知・推進、「北海道の電気 再生可能エネルギー100%へのロードマップ」による提言、市民主体のセミナーなどを行ってきました。 2014年3月に、3年間の活動が評価され、北海道新聞エコ大賞奨励賞を獲得しました。 2014年5月17日に正式に団体「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」を設立、「自然エネルギー100%の北海道」に向かって、見えるネットワーク、行動するネットワークづくりをめざします。さらに私たちの活動がひとつのモデルとなって、全国で同じ目的で活動する方とつながってより大きな力となっていくことを願っています。